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さらに高みを目指して/山陽盃酒造


天保8年の創業から180年余り、兵庫県播磨地方の山間にある宍粟(しそう)の地(日本一の酒米穀倉地帯であり、酒米の王様と称される山田錦の特A地区を有する播磨地域)で 「上質なお酒を届けたい」という想いで日本酒を醸し続ける山陽盃酒造。

7代目専務壺阪雄一さんが蔵に戻り、代表銘柄「播州一献」が飛躍的に全国で知られるようになります。自ら造った酒を東京で地道に営業活動をする努力が実った結果でした。その矢先、2018年11月、酒造りが始まったばかりの時期に火災が発生、100年以上の歴史ある木造の蔵の1/3の面積(1,500坪ほど)や兵庫県から景観形成重要建造物に指定されている母屋が焼失するという被害に見舞われました。当時の様子、そして2年9カ月経過した現在の取り組みと想いを専務取締役であり杜氏を務める七代目・壺阪雄一さんにうかがいました。


Q.火災当時はとてもショックを受けられたと思いますが、存続について迷いはありましたか


当日は消火もままならず、会社や酒造りの存続は難しいかもしれないと思われました。しかし不幸中の幸いで、仕込み蔵や麹室などの醸造設備は大きな被害を免れることが出来ました。また姫路酒造組合や全国の酒蔵の仲間と取引きの酒販店の方がすぐに駆けつけてくれ、国内外にいる多くの方々からご支援をいただき、なんとか二日後には火災を逃れたその年の仕込み第二号の酒を搾り、さらに二日後には洗米を再開することができました。


Q.火災があったことで変わったことはありますか


それまでも一年にひとつは酒づくりに関する改善してきましたが、その時ばかりは一気に多くのことを見直すきっかけとなりました。

火災による傷跡は甚大で、代々継いできた大切な蔵を失ったショックも大きいですが、現在の製造量に見合った設備に最適化できたことで、より手間ひまかけた手づくりの酒造りを叶えることができました。


2021年3月には原料処理(洗米・蒸米・放冷、麹室、酒母室、分析室等室温や湿度の設定を変えて搭載)の蔵を新設しました。

また昨今温暖化の影響で、酒造りをはじめる秋でも暑い日が続きます。涼しい環境で正しく酒造りを続けられるよう、昭和8年に建設された木造蔵を大切に保存しながら冷蔵庫化するため改築中です。その隣には、クリーンルームを備えた瓶詰めラインの設置も進めており、すべて9月に完成予定です。

出来上がったお酒は直汲みと同等の品質を保ったまま出荷できるよう、エアシャワー、ゾーニング、ステンレスタンクなど HACCPなどの世界基準に合わせた衛生管理が担保できる設計です。


蒸米を担いで運ぶ、など身体に負担のかかる作業工程を機械が担うよう変更。非効率だった動線を見直す効率化を図り、その分、人間の判断や経験を必要とする他の場所に人手をかけられるようにしました。結果的に、女性でも酒造りに参加しやすくなりました。


より良い蔵を造り、さらに高品質な酒を造り続けていくことが応援してくださる方々へのお返しだと思っています。



Q.山陽盃酒造と言えば「播州一献」だと思いますがどのような特徴がありますか


たったひと口飲んで満足するお酒ではなく、何杯飲んでも「おいしい」と言っていただけるような味わいを目指しています。日常的に食卓に置かれ食事と一緒に飲むことによって、お互いの旨さを引き立て合うような食中酒こそが「播州一献」です。


弊社の仕込み水は、兵庫県最高峰・氷ノ山の伏流水である揖保川水系のとても口当たりの良い軟水です。自社の井戸から汲み上げて使用しています。原料は「山田錦」をはじめ「兵庫北錦」「兵庫夢錦」など兵庫県原産の酒米にこだわっています。


2021年、”世界で最も大きな影響力を持つ”と言われる世界最大規模のワイン品評会「IWC2021」

で、「播州一献 純米大吟醸 山田錦」が金メダルとリージョナルトロフィーを受賞、「播州一献 純米吟醸 山田錦」「播州一献 大吟醸」の2銘柄が銅メダルを受賞し、世界的評価も得ることが出来ました。



Q.2020年に「CIDRE RonRon(シードルロンロン)」を新発売されました。日本酒蔵でシードルを造るのは珍しい印象です。どうしてリキュールではなくシードルになったのでしょうか


地元・兵庫県は南は瀬戸内海と太平洋に接し、北は日本海に面する広大で多様な土地です。しかし神戸ばかりが有名で、内陸や北部の良さはあまり知られていません。蔵がある宍粟市には、約40年前からりんご園があり、地元で愛されています。もともと地域の特産品を使って酒づくりを盛り上げたい、地域へ貢献したいという気持ちがありましたが、まずは「播州一献」ブランドを確立することに必死でした。しかし火災時、地元の皆さまから支えていただいたことで想いが再燃。せっかくなら日本酒と同じ「醸造酒」で、地元のりんごをそのまま使った酒造りをしようと決めました。「兵庫産のりんご?兵庫でシードル?!」という面白さと驚きも一緒にお届けしたいと考えました。「播州一献」が食事とともに味わう日本酒を目指しているのと同じく、現代の食生活にフィットして食欲を増進させるりんごの発泡酒であるシードルは最適であると思いました。コンセプトだけでなく、普段使用している清酒酵母(きょうかい901酵母)を使用し「播州一献」との共通項を強調し、蔵の方針を反映させました。



Q.シードル造りが清酒造りにもたらした良い影響はありましたか。


同じ醸造酒ですが、共通点、相違点どちらにも苦労があり乗り越えることで日本酒造りにも活かせることがたくさんありました。

りんご果実に含まれる窒素量は米に比べるとはるかに少なく、窒素を足さないと発酵不良が起きたり、糖度も米の方が高いので、思ったより苦戦しました。

また瓶内二次発酵のガス圧調整も難しかった点です。これは「播州一献 夏のうすにごり」という瓶内二次発酵を利用した日本酒の充填時にその時のノウハウを活かすことができました。


2年に渡る開発期間を経て、2020年12月に「CIDRE RonRon」をリリースすることが出来ました。兵庫県内3軒のりんご農家さんのりんごを使用しており、日本酒蔵らしい透明感ある香りと味わいで、爽やかな仕上がりになっています。


りんごの収穫が米と同じ秋であるため、日本酒造りと並行しての作業は大変です。それでも農家さんたちが、全国のさまざまな場所で愛されている現状を喜んでくれているので、私たちも頑張らないと、と張り合いになります。「CIDRE RonRon」が広まることで、宍粟市や兵庫県に興味を持ち来訪する人が増え、「播州一献」と並んで地元の誇りになることを願っています。いずれシードルリー(シードル醸造所)を独立させて、ガラス越しに醸造風景が見えたり、生のシードルを飲めたりするわくわくする場所を創造する構想もしています。「CIDRE RonRon」を理由に宍粟を訪れていただけるような未来を目標にしています。


Q.今年はいよいよ新蔵での初の醸造となりますね、どんな心持ちでしょうか


新しい設備で、いかに高品質な酒造りを構築できるかが大事だと思っています。

慣れるまでは繊細な微調整を繰り返しながら、最適な環境を見つけていく必要があるだろうなと覚悟しています。昨年より今年、昨日より今日…というように、常にお客様に対してより高品質なお酒をお届け出来るように取り組んでいきたいと思います。


【基本情報】

山陽盃酒造株式会社

兵庫県宍粟市山崎町山崎28

URL:http://www.sanyouhai.com/

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