金冠黒松で知られる岩国の村重酒造、8号酵母で席巻!



日本三名橋の1つ『錦帯橋』の上流約5キロにさかのぼった山間に位置し、寒冷清涼、豊富な水源を活用して酒造りに勤しんでいる村重酒造。

2019年より杜氏となった金子圭一朗さんが、昭和52年に頒布中止となった幻の「きょうかい8号酵母」で醸造した日本酒「eight knot(エイトノット)」は、クラウドファンディングで合計900本以上、達成率1300%超えの支援を獲得。

新進気鋭の若手杜氏、金子圭一朗さんにお話を伺いました。



Q.村重酒造について教えてください。


明治初期に創業した「森乃井酒造」を昭和26年に継承し「村重酒造」が誕生しました。

現在社長は4代目、杜氏は代々外部から来ており、私で8代目です。社長も自分も同年代という事もあり、風通しの良い雰囲気になっています。


Q.金子さんが日本酒に興味を持たれたきっかけはありますか。


もともと飲食業に従事しておりワインを主に取り扱っていたため、ソムリエの勉強をしていました。そんな中、日本酒の特別講座にたまたま参加したことがきっかけで、日本酒に興味を惹かれ学び始めました。日本酒は知れば知るほど奥が深く、当初は自分のお店を持ちたいと考えていたのですが、造りに興味を持ち村重酒造から誘いを受けて蔵人になりました。

酒蔵で働く前の経験は、商品開発や営業活動等、現在に活かされています。


Q.実際に酒蔵で働きはじめて何か気づきはありましたか。


業界に入る前は“思い通りの酒造りができる”と甘く考えていた部分がありました。実際、現場に入ってみると全然違う。具体的に上げていったらキリがないのですが、酒造りには緻密な計画が必要で、それを基に造ってみても理想通りに行かない事ばかり。座学も大事ですが、なにより経験の蓄積が本当に大切だとつくづく思い知らされました。知識が深まるほどに先人の方達の技術力に感服します。



Q.お酒を造る時はどの様に設計されているのですか。


まずはどういったお酒を造りたいかを考え、そのためにはどうするかを逆算しています。私の肌感覚的に仕込配合さえ整っていればある程度の酒質には持っていけますが、“もう少しシャープな酸味がほしい”“味の立体感をつくりたい”“香りは控えめにしたい”等、細かい部分を技術的な力で持っていくのが杜氏の技だと思っています。またそれを毎年再現していくことが大変な部分でもありやりがいでもあります。


Q.杜氏になってからどんなお酒を造りたいというイメージがありましたか。


「きょうかい8号酵母」の復活蔵として、すでに入社当時から8号酵母で自分の造りたい酒質のイメージが定まっていたのでそれにしたがって造りをしています。

「eight knot」については、第一弾は8号酵母の特性を検証するため、試作の意味も込めて醸造しました。第二弾は自分の目指す酒質とお客様の声を融合させて醸造しています。



Q.「eight knot」は「きょうかい8号酵母」在りきだったのですか。


はい、名前の通り「きょうかい8号酵母」の存在から生まれたお酒です。実は村重酒造では平成19年から「きょうかい8号酵母」を使用しており、長年の醸造データを保有していたので、造る前からどんな酒質になるかはある程度の予測がつきましたし、すごくポテンシャルを秘めた魅力的な酵母だと言う事も分かっていたので、“8号酵母の復活蔵”として「村重酒造」のアドバンテージを早く確立したいという想いが大変強くありました。


Q.「eight knot」は甘みの厚みがありながら米の旨味もある、単に「甘酸っぱい酒」とも一味違う個性が感じられますね。どの様に飲むのがお勧めですか。


「きょうかい8号酵母」は通常の酵母よりは高い酸味が特徴で、和食というよりもフレンチやイタリアン等の「洋」に合わせて楽しんでいただくことがおすすめです。特に肉の脂ととても相性が良いです。ジビエのイノシシ等と合わせるのもお勧めです。

「きょうかい8号酵母」はストロベリー系の香りがあり、熟成してくるとショコラの様な香りが出てきます。冷から燗まで温度の幅が広く楽しめるお酒です。


Q.現在「藤黄(とうおう)」と「白練(しろねり)」の2種類が出ていますね。


本当は3種類出したかったのですが、2種類に絞り、第一弾は速醸造りと生酛造りの造り方の違いで比べてみました。生酛の方がより酵母の良さが出ていると感じたので、第二弾はどちらも生酛造りで、白麹と黄麹を使用した2種類を造りました。今後は黒麹を使って造ってみたいと考えているので、来季は3種類発売の予定です。


Q.銘柄「村重」は社長の強い想いから造られたとの事ですがもう少し詳しく教えてください。


村重酒造らしい定番銘柄として造られた日本酒です。「eight knot」とは真逆の、地に足のついた奇を衒わない王道の辛口スタイルがテーマのお酒。地元の5、60代の男性がメインターゲットです。

山口県は比較的甘めのお酒が多く辛口のお酒が少ないことに気が付きました。村重酒造もどちらかと言うとやや甘めのお酒が多いのですが、山口県の中では辛口寄りだという事に気が付き、それを個性、アドバンテージとしました。

今後は淡麗から濃醇な辛口タイプなど3種類での展開を計画しています。最近フルーティーで甘酸の効いたお酒が人気のため耳にする機会が減った辛口酒ですが、一定のニーズはまだまだあるの

で、あえてそこを狙っているお酒です。


Q.今後の金子


さんの目標を教えて下さい!


型にはまらず常に柔軟性を持ち、多角的思考で、村重酒造だからこそ創造できる日本酒を造っていきたいです。

「きょうかい8号酵母」は酸が強く、「売れない」と言われていましたが、食の多様化が進んでいる昨今、日本酒も多様性の時代です。最近は酸が強い日本酒も受け入れられ始めています。

他の酒造もどんどん世代交代が進むにつれ、酒質のバリエーションが増え面白い時代となっています。一方で私見ではありますが、王道スタイルをきちんと造れる技術者が減ってきているように感じます。伝統的な王道スタイルのお酒もあり続けるべきだと思うので、そちらも大切にしていきたいです。



地元で長らく愛されてきた強い商品がある一方で、金子杜氏、社長とも代替わりして以降、新しい世代へのアプローチが行われており今後の展開が期待できる村重酒造。今後「eight knot」がどのように進化していくのか、また他にどんなお酒が出てくるのか楽しみです。


【基本情報】

村重酒造株式会社

URL: https://www.murashige-sake.co.jp

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