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クラフトビールの多様性と豊かさの追求/Far Yeast Brewing


2011年創業、2012年にオリジナルブランド「馨和 KAGUA」をベルギーでの委託契約醸造(醸造所をもたない「ファントムブルワリー」)により販売開始。その後、2017年には山梨県の小菅村に自社工場「源流醸造所」を設立し、今では直営飲食店を複数拠点持つ「Far Yeast Brewing」 定番となる「Far Yeast」シリーズは東京らしい上質さ・アロマホップによる上品な香りが特徴。爽快でフルーティーな香りと味が口いっぱいに広がり、ずっと飲んでいたくなるような心地良い味わいです。これまでのビールの概念を覆すような驚きを与えてくれる一杯です。 快進撃を続ける裏側について代表の山田司朗さんにお話をお伺いしました。



Q.最初から「世界に通用する」ビールを造りたいという想いがあったのですか?


当初はビールやマーケットに関して分からない事も多かった中で、こういうビールがあったら面白いのではというアイディアが有り、それをなんとか形にした感じです。国内のどこかでブルワリーを立ち上げて製造したかったのですが、当時はまだ情報や小規模機材の入手が難しく、また資金調達や免許の取得等ハードルが高かったので、まずは契約醸造からスタートして販売実績を作っていった方が近道だと思いました。


Q.海外の日本食レストランで飲んでもらう事を、念頭に入れていたのですか?


当時はまだクラフトビールがあまり普及しておらず、周りに話しても「地ビールを今からやるの?」という反応ばかり、マーケットのニーズが無さそうだと海外に目を向けました。海外の日本料理店ではスーパーや居酒屋と同じ国内大手メーカーのビールが並んでいますが、例えばワインで考えた場合、スーパーで売っているワインとフレンチのファインダイニングで扱っているワインは異なります。和食レストランや和食を取り扱うファインダイニングで扱ってもらえる様なビールを造ろう!と考え、4年の構想期間と14作の試作品を経て誕生したのが「馨和 KAGUA」です。



Q.「馨和 KAGUA」をどのような場で楽しんで欲しいというイメージがありましたか?


イギリスやドイツでは軽いおつまみと合わせた立ち飲みのビアパブスタイルが主流だったり、ビールは伝統的に食事と合わせるイメージが有りませんが、15年位前に3年ほどヨーロッパで生活し色んなビールに出会い、食事と合わせるビールが有る事を知りました。 「馨和 KAGUA」も食事と合わせて欲しいと、発売時はBlanc『白』とRouge『赤』の2種類、白はお魚料理等軽めの味付けに、赤は肉や味付けの濃いものに、と意識的にワインに寄せたイメージで造り、飲み方もがぶがぶ飲むのではなく、ワイングラスでじっくり飲む事を推奨しました。


Q.日本でお店を構えた時から食との提案は考えられていたのですか?


始めは渋谷にオープンしたのですが、当時はビールに特化したお店というとビアパブという形態が多く、食よりビール中心、ビール愛好家が集まるお店ばかり、もっとクラフトビールを飲む人を増やしたい、料理を楽しめる雰囲気のお店にしたいという想いがありました。 魅力的な飲食店を展開しているディスカバリーさんに協力して頂き、食幹という和食屋さん(ディスカバリーが運営)にフードメニューの開発や料理長の派遣をお願いしました。当時にしては気合の入ったチャレンジをしていて、魚屋から直接仕入れた魚をお店で捌いたり工夫した料理を提供していました。


Q.契約醸造から自社醸造に移行しましたが、自社だからこそ出来ることはありますか?


革新的なビールを生み出したいということもあって自社醸造に切り替え、よりリスクが高い商品を扱える様になりました。ワインや日本酒、ウイスキーに使われた木樽でビールを長期発酵熟成させる"バレルエイジング”という技法で製造するビールのシリーズ「Off Trail」は、商品になるまで1年以上かかるので委託は難しく、自分たちで設備をもっていないと出来ない事です。


Q.3つの定番商品がありますが、それぞれのコンセプトの違いを教えて下さい


「馨和 KAGUA」はファインダイニングに合うビールとして誕生し定番化されました。今後もあまり変えること無く販売し続けていきたいと思っています。 2014年に誕生した「Far Yeast」は毎回レシピを微調整して品質向上に努めています。缶ビールの販売を始めたり自由度が高いのが特徴です。今後も色々挑戦して新たな定番を少しずつ増やしたり、限定ビールを生み出していきたいです。 2019年に誕生した「Off Trail」はまだまだ色々な可能性を秘めています。今はワインやウイスキーの木樽が中心ですが、ポートワインやシェリー、コニャック等の樽を増やしていったり、味噌等の日本らしいものを使用することも検討しています。熟成することでバリエーションが楽しめますし、ビール酵母や採取した野生酵母を使ったりとチャレンジ出来る幅がとても広い、今すぐ爆発的な人気を狙うというよりは長期で挑戦していくビールだと思っています。



Q.広い世代でも飲みやすいフルーツビールが各社から出てきている印象ですが、クラフトビール業界でこれから力を入れていく方向性等あるのでしょうか?


日本のフルーツは世界で人気も高く高級品、付加価値があるので日本の各ブルワリーが力を入れています。フルーツビールはまだ確立されたビアスタイルがなく定義しきれてない部分があるので、今後日本発信の物が定義化される可能性もあり夢があります。 特に山梨の桃は生産者も多く6月から8月の終わりにかけて時期ごとに様々な品種が出てくるので非常にバリエーションがあります。桃のビールは地元の方に喜ばれるだけでなくお土産としても人気があり、毎回直ぐ完売してしまいます。


Q.今後の目標を教えて下さい


始めてみるとビールはとても奥が深く“総合力”が必要だと日々感じています。 定番ビールの改善や限定ビールを開発していくことも大切ですが、品質管理などお客様には直接見えない部分の地道な取り組みも大切にしていきたいです。 また食品業界として大きな課題でもある食品ロス等、社会的意義への貢献をもっと大事にしていこうと思います。コロナ禍当初、飲食店の休業の影響で大量に廃棄寸前となってしまった「馨和 KAGUA」を福岡県八女市にある日本酒と焼酎の老舗蔵元「喜多屋」との共同で、再蒸留して新たに「KAGUA GIN(ジン)」として生まれ変わらせる事が出来ました。そういった対応力、総合力も必要になってくると思います。 またある程度の規模と組織力も必要です。上のグレードの機械を導入することで、造れるビールの幅も広がってきます。儲けのためでは無く品質や価格等、お客様にとって意味のある形で還元できる様な設備投資もしていきたいです。


最新のホップ理論と先進的な醸造手法を日本でいち早く実践したり、海外輸出に積極的に取り組んだりと常にオリジナリティ溢れる発想でビールの多様性と豊かさを取り戻すために発信し続けている「Far Yeast Brewing」。 どんな状況も好転させる臨機応変さもあり今後も日本のクラフトビール文化を築き、人々をワクワクするような商品造り、これからの進化が楽しみですね。


【基本情報】 Far Yeast Brewing URL https://faryeast.com/

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