中野BC株式会社は1949年に和歌山県海南市で焼酎製造から始まった酒造メーカーです。今では日本酒・リキュールなどの酒類の他に、エッセンシャルオイルや梅エキスなど健康・美容に関する商品も多数製造しています。その中でも和製クラフトジン「槙-KOZUE-」・和製スピリッツ「香雪-KAYUKI-」・和製リキュールの「紀州のゆず梅酒」がフランスで開催されるリヨン・インターナショナル・コンクールで金賞を受賞し、世界から日本の新たな酒として注目を集めています。日本でも長く親しまれ、世界へ羽ばたく酒造りの裏側について中野幸治社長にお話を伺いました。
Q. 創業の経緯を教えて下さい。
僕らは酒ではなく醤油造りから始まりました。地元は醤油発祥の地として有名で、1932年に祖父が醤油製造を開始。祖父が酒蔵への憧れがあり1961年に中野酒蔵が誕生しました。焼酎の販売からスタートし、それ以降日本酒・リキュール・ワインなど様々な商品も製造しています。お酒の発酵技術を活かしてお酒以外の商品も提供したい想いを込めて、Biochemical Creation(生化学の創造)の略語を名付けた「中野BC」と2002年に社名を変更しました。
Q. 今まで世界になかった商品を産み出す、商品開発力が際立っているように思えます。その秘訣は何ですか?
僕らには男性チームの「SAKEメン」、女性チームの「なでしこ」2つのチームがあります。各部署を越えて男性・女性ならではの意見を発案しています。
クラフトジンやウオッカは男性ならではの視点で開発。緑茶梅酒・はちみつ梅酒などお酒に弱い方や女性でも抵抗なく手に取りやすくなるようにリパッケージしました。
Q. クラフトジン「槙-KOZUE-」の製造のきっかけは何でしたか?
『クラフトジンがこれからトレンドになる!僕らの蒸留技術を活かした最高のクラフトジンを造ろう!』とSAKEメンが開発を始めたのがきっかけでしたね。BARとの繋がりやカクテルの提案、商品の内容など全て彼らが企画してくれました。
もともと、梅スピリッツや梅種焼酎を製造していた場所で同じ蒸留酒であるクラフトジンも製造することにしました。その場所を新しいお酒のクラフトジンを製造する場として、僕らの始まりとなった焼酎の富士白の名をつけ、富士白蒸留所と蒸留酒部門を開設しました。
Q. 希少な針葉樹であり霊木として大切にされている「コウヤマキ」を世界で初めて、ジンのボタニカルに使用されましたね。なぜボタニカルに選ばれたのですか?
僕らはズブロッカのような地元らしさがある美味しいお酒を目指しました。ズブロッカはポーランドのお酒で、世界遺産のビャウォヴィエジャの森で採れるバイソングラスを漬け込んでいます。和歌山にも世界遺産の高野山がありコウヤマキが自生しています。また和歌山県人は仏様にお供えする木としてコウヤマキを使用していて馴染みがる素材なんですよ。
ですが、コウヤマキを食用として使用するのは世界で例がなかったので食用検査や調達場探しやレシピの配合調整に時間がかかりましたね。コウヤマキだけではウッド香が強く単調になる為、僕らが造っているエッセンシャルオイルから案を得て柑橘類を配合しました。ウッディな香りと温州みかんの甘さと爽やかなレモンの香りが調和し、山椒が後からピリッと香る仕上がりにしました。「槙-KOZUE-」は地元和歌山を感じてもらえる仕上がりになり、満足しています。
Q. ジンの製造過程で、これまでの醸造技術はどのように応用されているのでしょう?
ジンの製造方法を一から理解するためにラボで研究を繰り返しました。僕らの強みは多品種の酒や健康美容商品も自社で研究して製造していることです。ジン造りには他の商品に携わっている社員の意見も取り入れながら開発しました。いち早くお客様に美味しいジンを提供したいと思い、元々実績のあった梅酒の漬け込みで使用していた醸造アルコールを利用して造ることになりました。
Q. 和製スピリッツ「I香雪-KAYUKI-」はどのような商品ですか?
SAKEメンが発案した「槙-KOZUE-」「香立-KODACHI-」「香雪-KAYUKI-」蒸留酒3本柱*の1つです。
和歌山県産の南高梅を使用した自社製造の梅酒原酒を、さらに「蒸留」という工程を加えることで、凝縮した梅の華やかな香りと、アルコール分だけを取り出したスピリッツです。雪に負けじと春の香りを漂わせながら力強く開花していく梅の花をイメージして名付けました。
やわらかいイメージで女性のお客様や海外のお客様にも日本らしさを感じて貰えるようなネーミングにしました。
また蒸留・スピリッツに馴染みがない方もいらっしゃるので、あえて和製スピリッツとも名付けました。日本らしさを名前に加えることで少しでもお客様に親しみを持っていただけたと思います。
Q. 今年もリヨン・インターナショナル・コンクールで和製リキュールの「紀州のゆず梅酒」が金賞を受賞されましたね。海外のコンクールに長年挑戦され続けているのですか?
10年前から輸出に力を入れ続けています。やはり海外の方に商品をPRするには海外のコンクールで受賞することが魅力になると思い、リヨンコンクールには1回目から参加し続けています。現地のお酒よりも僕らの紀州のゆず梅酒の方が評判が高く、世界で通用することが出来ると自信が持てました。
ヨーロッパの方々は商品よりも会社の想いや商品が造られるまでの工程などスト―リーも気にされます。僕らは地元が柑橘大国であること自然豊かな田舎であることも伝えて、和歌山県をイメージしてもらいます。食後・食前ではなくずっと飲み続けられるように提案しています。
Q. 今後の酒業界を見据えて、どのような活動を考えられていますか?
今はブームのお酒よりも、ブランド名があるお酒が売れていると思います。
また、どこもアルコール度数を意識して販売するようになりましたね。ストロング缶が一時的に流行りましたが、今は低アルコール商品が主流になっています。そこで、僕らは今自分たちが持っている技術を活かしノンアルコールビールの開発に取組んでいます。
地元農家のみかんは老若男女問わず様々な世代の方に愛されていますが、僕らのお客さんはお酒が飲める年齢の20歳以上の方達だけです。また、車を運転する人や妊婦さんなどお酒が飲めない人に親しんでもらうためにも、ノンアルコール商品を開発し広めていきたいと考えています。お客様の好きなタイミングで飲めて、幅広い世代の方に味わって頂ける中野BCのノンアルコール商品を多くの方に飲んで頂きたいですね。
誠意・熱意・創意を信条とする中野BCの挑戦はこれから更に加速していきます。他社に負けない技術力で、世界に通じるモノづくりを今後も目指すと語ります。世界的な大会でも栄光に輝いた味を味わってみませんか?
*蒸留酒3本柱
「香雪-KAYUKI-」 華やかな梅が香る和製スピリッツ
「槙-KOZUE-」 コウヤマキボタニカルの和製クラフトジン
「香立-KODACHI-」 紀州杉と紀州桧が香る和製クラフトジン
【基本情報】
中野BC株式会社
URL http://www.nakano-group.co.jp/
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