しっとりと夜更けに飲む酒も良いけど、休日の昼間から縁側で青空を眺め、またはそんな青空を思い浮かべながら飲む酒はいかがでしょう?
全国でも酒蔵の街として知られる伏見の地で92年の長い歴史に一度は幕をおろしましたが、それから7年の月日が経ち見事復活を遂げた「藤岡酒造」。
全国の酒蔵を訪れ修行を積んだ5代目蔵元の藤岡正章さんは、倉庫として使われていた場所を酒蔵に改装し、自身のこだわりを詰めた酒造りへと改革をしました。
約220石(4万L)という製造量からも京都府外へはあまり出回らず、「京都へ来たなら“蒼空”を飲まないと!」と言う声も聞き及びます。
「量より質、“品質がすべて”と思っています。自分たちの目の届く範囲で管理したい。」と
小規模で製造し、6本の仕込みタンクとフネ搾り(細長い酒槽に醪を入れた酒袋を何層にも重ね押蓋をして、上から圧をかけて搾ること)で昔ながらの製造方法を貫いています。いいものを造るために、お客さんから生産を増やしてほしいと頼まれても量産はせずに自ら管理できる量で妥協のない酒造りを続けています。
蔵の復活から変わらない品質で造り続けている『蒼空』。
決して派手な酒ではなく、飲んだときに青空を見上げるようなホッとした気持ちになってほしいという意味を込めて。たしかに名前の通り、すっきりとして晴れ晴れしい気分になります。
また、繊細な味わいの京料理となじむように、香りが強く出過ぎないように麹作りからこだわっているとのこと。水のような爽やかさの中に米の甘さ・旨味が感じられ、出汁が効いた上品な料理の後にスッと飲めるような軽くてキレイな飲み口が特徴的です。
2020年に発売した『蒼空 特別純米生原酒・雄町』。これまで藤岡酒造では食中酒を目指して加水した酒のラインナップでしたが、こちらは“無濾過生原酒”でどっしりとした味わいが特徴。生酒のフレッシュさに力強い米の香りと旨味が感じられ、「#蒼空らしくない蒼空」として酒単体でも楽しる一本となっています。
そして2019年に発売した『蒼空 蔵づくり米 キヌヒカリ』は藤岡さん自ら京都・大原地区の米農家とともに丹精込めて育てた食用米を使用して造られています。「ある時長野ワイナリーの方と話した時に土の話になった。ワインでは酒の作り手が素材から心血注ぐことが当たり前なのに、自分たちは米のことが分かっていない。」とこれまでの酒造りを見直し、米や農家のことを理解するために自分でも米を作るようになったそうです。
農家の高齢化や後継者不足が問題となる中で、大原の農業を盛り上げたいと始まった酒造り。低精白だと酒米との違いが如実に現れてしまうので、50%まで精米します。
まったりとした米の香りと丸みのある味わいの後に清涼感のある爽やかさも感じられ、秋の味覚“さんま”と飲みたくなる一杯です。同じ蒼空でも一味違った味わいに驚きます!
今後は蒼空を通して、生産者の想いや田んぼの風景など商品の裏側が目に浮かぶような酒造りをしたいと語る藤岡さん。「よい酒は必ずや天に通じ、人に通じる」という家訓通り、思いを込めた酒は多くの人に感動を与え、澄んだ青空のようなやさしさを届け続けるでしょう。
【基本情報】
藤岡酒造
オンラインショップ http://sookuu.net/shop/
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